高校生の頃からずっと付き合っていた彼がある日突然「別れよう」と言ってきました。最初は理由を尋ねても中々答えてくれませんでした。
「好きな子ができたの?」
「違う。今でもA子(私)のことは好きだ」
「じゃあなんで?」
「ちょっと言えない」
こんなやり取りをしばらく続けていて、いよいよ彼のほうが泣き出しました(私はすでに泣いてた)。
「ごめんA子のことは好きだ。A子には幸せになってほしい。俺と一緒にいたらA子に迷惑をかけるし、嫌な思いをさせることになるから」
彼は付き合い始めた頃からずっとこうやって私のことを大事に思ってくれている、そこには確信があったからこそ、特にこの別れの切り出し方に納得できなかったのかも知れません。
「迷惑かどうかは私が決めることだから、言ってみて」と言って、彼はやっと教えてくれました。
宗教が恋愛を許さない
彼の親は某宗教の信者で、その宗教の規則で信者以外の人と結婚することは禁止されていたのです。
彼と付き合うには、私もその宗教の信者にならなければならないそうです。
彼はそれを嫌ったんです。
「その宗教を辞められないの?」と聞くと、辞めると家族との縁も切らなきゃいけなくなるから、それはそれで抵抗があると彼らしい答えが返ってきました。
結局話は平行線のまま進まず、私の方が折れることになりました。
彼は何度も
「ごめん」
と謝ってくれました。
望まない別れ。悩みが募る日々
それから数ヶ月間、ずっと虚しい日々が続きました。
それほど彼と過ごした時間は貴重で大切な日々だったのです。誰がこの状況を望んだのでしょうか(神?彼?彼の家族?彼の宗教?)。
「彼の宗教に入信してでも一緒になるべきだったんじゃないか?」
という思いと、それができなかった自分に対する嫌悪感にまみれた瞬間もありました。
けど、私がそれを言っても彼がそれを望まないことも分かっていて、やるせない気持ちばかりが募ります。
まさか彼からの着信?!出てみると・・・
けど、ある日突然彼から携帯に着信があったのです(別れてから半年くらいだったと思います)。
嬉しさ半分、複雑な気持ち半分で電話に出ると
「久しぶり。元気?A子の職場の近くに来てるんだけどこれから会える?」
と懐かしい彼の声が聞こえてきました。
近くのカフェで待っていて、私を見つけると手を振ってくれました。
嬉しさと不安の混じった感覚で向かい合わせで座りました。緊張していたのか彼の顔がとても強張っていたのを思い出します。
「仕事どう?」
「まあまあかな」
「そっか…」
しばらくの沈黙のあと、彼はこう言いました。
「新しく彼氏とかできた?」
その瞬間、私の中からぶわっといろんな感情があふれてきてそれと合わせて涙もボロボロでてきました。
やっとの思いで言えたのがこれ↓
「できるわけないじゃない…」
それからはしばらく泣かしてもらいました(人もたくさん周りにいたのに彼には申し訳ない…)。
落ち着いてから、彼の口から本題について語ってくれました。
結果的に彼はその宗教をやめることにしたそうです。
ご両親には一度反対されましたが、彼のお姉さんが一緒に説得してくれたことで、宗教をやめることを許されたとのことでした(お姉さんももちろん信者です)。
それで、もしも私が別の男性と付き合っていないのであれば、もう一度やり直したいと思って今の流れになったようです(もしも、私が別の男性と付き合っていたら、静かに身を引く覚悟もしていたそうです)。
信者であるはずのお姉さんが彼を応援した理由
もちろん私としても願ってもいないことだったので、すぐにOKを出しました。
人生で一番うれしかった瞬間です(その時点で)。
それから1年ほど同棲してから結婚することになりました。
彼のご両親は宗教上の決まりから私たちの結婚式には参加しませんでしたが、代わりにご両親を説得してくださった彼のお姉さんが来てくれました。
あとからお姉さんは
「本当は私も好きな男性がいたんだけど、宗教を理由に告白できなかったの。弟には私と同じ思いをさせたくないと思って、両親を説得しようと思ったんだ」
と教えてくれました。